女子トイレの心理学
しばらく前に毎日新聞の取材に応じて「女子トイレの生態学」について30分くらい電話で語った。
R25に引き続き、なぜかトイレにまつわる取材が多い今日この頃である。
後日、郵送していただいた記事は、おもしろくおかしくまとまっていたが、残念ながら、お話ししたことの1/30くらいしか活字化されていなかった。収録に6時間かけたのに、TVに映ったのはホンの一瞬だったときのひな壇・若手芸人さんの気持ちがわかるような気がした(と、これは冗談)。
そのときの取材のテーマはオフィスにおける女子トイレの実態。長時間化粧をしたり、合コンの打ち合わせをしたりと、男性にはうかがいしれないトイレでの女子の行動をふまえ、それはなぜだろう?という記者の方の疑問に応えるものだった。
女子と男子でトイレにおける行動に違いがあるなら、それはきっと、その行動随伴性に違いがあるからである。と、行動分析家はそう考える。
女子が合コンの話をデスクで軽々しくできないのは、そうした行動が弱化される随伴性があるからだ。上司から嫌みを言われたり、同僚の男性から「軽く」みられかねない。
逆に男子がキャバ嬢の話をデスクで軽々しくしても、昔は強化されることはあっても、弱化されることは少なかっただろう。最近ならセクハラ訴訟になりかねないから、そういう会話は陰を潜めているかもしれないが。
女子がトイレで化粧するのは、化粧した自分の顔が好子であり(あるいは化粧の落ちた自分の顔が嫌子であり)、化粧する行動レパートリーも、化粧のためのオペランダムもそろっているからだ。
男子が化粧しないのは、多くの男子にとっては化粧した自分の顔は嫌子だし、行動レパートリーもオペランダムもないからだ。
今からもう20年前くらいに自分がサラリーマンだった頃、女子にはまだ「おちゃくみ」という仕事が任されていた。あの頃、男子がタバコ休憩をする代わり、女子はキッチンに集まって、お茶をいれながら上司の悪口を言い合ったり、アフターファイブについて打ち合わせしていたように思う。
男女同権、機会均等が進み、「おちゃくみ」の仕事が減ったぶん、キッチンに集合することは減ったかもしれないが、話す事が減ったわけではない。男子と一緒に喫煙所に行って、男子に交じって合コンの話をするほど、“男女同権”が進んだわけではないから、男子の目の届かない「女子トイレ」が、代替的に、話をする場になるのもうなずける。
男女ではそもそもトイレに滞在する時間に差がある。これは「小便器」の存在が大きい。自分はだいたい限界の95%まで我慢してから急いでトイレに行き、さっさと用をすませて戻るタイプである。時間にして数十秒。
女子の場合、毎回、個室に入り、準備をして、座る。一度座ると、立つ行動にはコスト(労力)がかかる。だから、必要最低限でさっさと出る行動は弱化される。逆に、座ったまま何か考え事をしたり、雑誌を読んでみたりする行動は強化される。
ただし、このような行動随伴性の違いは、あくまでジェンダー(性役割)としての男女差であり、セックスとしての性の違いによるものでは(たぶん)ない。
性に期待される役割、つまり社会的な行動随伴性が時代や社会とともに変化すれば、当然、行動も変化する。
男子がデスクで女遊びの話をすると評判が悪くなり、出世にも響くようなら、そして、喫煙所にも同じような弱化の社会的随伴性が生まれて、男子トイレが相対的に聖域化すれば、男子も男子トイレでそういう話をするようになるだろう。
男子にとって化粧することが好子になり、おねえまんずのIKKOさんのようにものすごい技を身につけ、しかし、それをデスクでやることは弱化されるようなら、男子もトイレで化粧することになるだろう。
実際、大学の男子トイレでは、鏡に見入って髪の毛をいじったり、友達どおしで化粧品について語る学生が急増している。今日は、なんと、電気ごて(といったら学生に笑われたけど)で、髪の毛をセットしている男の子に出くわした!
家庭では奥さんのしつけで、おしっこするときにも座って用を足す男性が増えているらしい。そういう家庭に育った子どもなら、学校やオフィスのトイレでも座っておしっこするかもしれない。そうなれば、トイレで長い時間をすごす環境が整う。
十年後には「男子トイレの生態学」の取材を受けているかもしれない。
06:19 午後 | 固定リンク
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